11/9 勉強会

【研究報告】

担当:長坂

タイトル:触覚刺激パターンの違いが脳領域間の機能的結合性に与える影響―MRIを用いたfunctional connectivityの評価―

  • 目的:これまで皮膚を擦るような複雑な触覚刺激(CS)によって一次運動野の興奮性および運動パフォーマンスが変化することが報告されている.本研究は,機能的MRIを用いてCSを与えた時の脳活動と神経機能結合を明らかにすることを目的とした.
  • 方法:健常成人42名を対象とした.脳活動計測には3テスラMRIスキャナーを用いた.右手示指にCSまたはコントロールとして単純な触覚刺激(SS)を与えるブロックデザインを用いて,それぞれ条件における脳活動を解析した.また,一次体性感覚野(S1)に関心領域を設定し,当該領域と脳活動相関がある脳領域を評価した.
  • 結果:SS条件およびCS条件ではいずれもS1の手領域に有意な脳活動上昇が見られた(p<0.05, 多重比較補正あり).S1を関心領域として,全脳のボクセルを対象に機能的結合解析を行ったところ,CS条件では,同側の一次運動野,両側の後頭頂皮質,反対側小脳との有意な活動相関が確認された(p<0.05, 多重比較補正あり).この傾向はSS条件では確認されなかった.
  • 考察:CSによってS1と運動実行機能に重要な一次運動野や小脳との機能的結合性が変化することが分かった.これら機能結合の変化がパフォーマンス変化の背景にあるメカニズムである可能性が示唆された.

 

【文献抄読】

担当:高橋

タイトル:Effects of Intermittent Fasting on Health, Aging, and Disease

出典:Cabo et al., The New England Journal of Medicine 381;26 Dec 26, 2019

  • 要旨:間欠的断食が健康,老化,疾患に与える影響について,動物実験およびヒトを対象とした研究のレビューをする.代謝レベルでは,断食などによりエネルギーが枯渇した状態に陥るとグルコース代謝からケトン体代謝へとシフトする.その際,遊離脂肪酸がβ酸化によってアセチルCoAへと変換され,ケトン体が代替エネルギーとして利用される.このケトン体は,BDNFの合成やオートファジーを活性化させ,脳や心臓,骨格筋などの代謝回転に影響を及ぼす.具体的には,1日おきの断食や1週間の内の2日間の断食,1日16時間以上の断食などによってケトン体代謝へと移行する.その結果,実験動物における寿命延長,酸化ストレスの低減などが報告されている.ヒトを対象とした研究においても,肥満,インスリン抵抗性,脂質代謝異常,高血圧,炎症など対しての有効性も一部示されている.加えて,認知機能や心大血管リスクの改善,がん,アルツハイマー病,喘息,多発性硬化症,リウマチなどに対しても改善が報告されている.一方,動物実験では長期介入効果が示されているものの,ヒトを対象とした研究では,長期間の断続的断食の効果については今後の課題である.また,若者や中高齢など年齢層別における効果や安全性についても,検証していく必要がある.