5/17 勉強会

【研究報告】

担当:平林

タイトル:反復他動運動が脊髄機能と関節運動に及ぼす影響:注意に着目

  • 目的:反復他動運動中の被験者の注意対象に着目し,脊髄機能と関節運動機能に及ぼす影響を明らかにすることした.
  • 方法:実験を2つ実施し,健常成人20名を対象に,実験1は,10分間反復他動運動介入中に4条件の注視条件(コントロール,前方,モニター,足関節)を実施し,介入前後の相反性抑制の計測を行った. 実験2は,介入前後で関節運動機能を評価した.
  • 結果:相反性抑制は注視条件に関係なく,反復他動運動後に相反性抑制は増強した.関節運動機能は足関節接注視することで関節運動機能が向上した.
  • 結論:足関節を注視した反復他動運動によって,相反性抑制が増強し,関節運動機能が向上した.

 

【文献抄読】

担当:菊元

タイトル:Single leg hop for distance symmetry masks lower limb biomechanics: time to discuss hop distance as decision criterion for return to sport after ACL reconstruction?

出典:British Journal of Sports Medicine 2021 Feb

  • 目的と背景:膝関節前十字靭帯再建術(ACLR)後,スポーツへ復帰の基準として用いられている片脚ホップ距離(SLHD)計測時の跳躍時と着陸時の生体力学的な検証を行った.ACLR後の再建術脚と非関与脚(反対側)また健常脚との評価比較を行った.
  • 方法:ACLR後のアスリート26名と健常アスリート23名における,SLHD時の3次元運動解析と筋電図(EMG)を使用し,下肢と体幹の運動学データを導き出した.下肢の関節モーメントを計算し,EMGの筋活動値より筋骨格モデリングアプローチを使用して下肢筋力を算出した.健患間(ACLR後のアスリート),および群間差異(ACLR後のアスリートと健常群間)は,それぞれ対応のある独立したサンプルt検定を使用して評価をした.
  • 結果:関節可動域や関節モーメント,また各関節の仕事量と寄与率の有意差が,健患間と群間で認められた.ACLR後のアスリートは,ホップ距離で97%±4%の健患比であり,スポーツ復帰基準を満たしていたが,跳躍時における膝関節の作業量の対称性はわずか69%であった.着地時の仕事量においては,再建術群は反対側に比して低値を示した一方で,反対側は健常群よりも高値を示した.ACLR後のアスリートは,股関節の屈曲,骨盤傾斜,体幹屈曲に行い,股関節の働きに依存した着地を行っている可能性が高い.
  • 結論:SLHDにおける跳躍距離の評価では,下肢の生体力学における対称性を保証できていない可能性が高い.跳躍距離の検証は,膝関節ではなく,主に股関節と足関節の機能を反映している.
  • 自身の研究との関連:スポーツ外傷の中でも重症度が高い膝関節前十字靭帯損傷は,再建術後に以前のパフォーマンスレベルに復帰できないアスリートも多く問題視されている.その要因として,復帰基準が曖昧である点が考えられており,基準の見直しが必須である.私は足関節機能に着目し着地時に膝関節に与える影響を検証しているが,本論文結果より,改めて着地動作時における膝関節機能の重要性を再確認できた.