5/24 勉強会

【研究報告】

担当:堀田

タイトル:高酸素血症モデルラットの骨格筋における微小循環と酸素動態

  • 背景:高濃度酸素の投与は,呼吸・循環障害を有する症例に対して実施される治療法である.運動耐容能の指標である最大酸素摂取量は,100%酸素投与により改善することが報告されているが,高濃度酸素投与時の骨格筋における酸素動態は明らかではない.
  • 目的:高濃度酸素投与がラット骨格筋における安静時の毛細血管内(pO2mv)および間質内酸素分圧(pO2is),ならびに血管外への酸素移動の原動力である圧勾配(ΔpO2 =pO2mv – pO2is)に与える影響を検討した.【方法】雄性Sprague-Dawleyラット(月齢 10-16週齢)の前脛骨筋を対象筋とした.麻酔下で吸入気酸素濃度(FiO2)を21, 60, 80, 100%に段階的に増加し,リン光クエンチング法によりリアルタイムでPO2mvおよびPO2isを計測し,ΔPO2を算出した.赤血球(RBC)をラベリングし,共焦点レーザー顕微鏡を用いてRBC fluxとvelocityを算出した.
  • 結果:100%O2投与は動脈血酸素分圧を顕著に増加したが,PO2mvおよびPO2isいずれも一定の値を維持していた.FiO2を60%に増加した直後(~60 s)には,ΔpO2の一時的な増加を認めたが(P<0.05),すぐにベースライン時(21%O2)の水準に戻った.FiO2が80%および100%の時点で計測されたRBC fluxおよびvelocityは,FiO2 21%および60%と比較して優位に低値を示した(それぞれP<0.05).
  • 考察:動脈血が酸素化したとしても,ラット前脛骨筋の毛細血管および間質の酸素分圧および圧勾配は変動しなかった.その原因には,高濃度酸素投与時の毛細血管の血流低下が関与していると思われた
  • 結論:高濃度酸素投与はラット骨格筋における毛細血管および間質内の酸素分圧,ならびに圧勾配に影響しなかった.

 

【文献抄読】

担当:小島

タイトル:Anodal Transcranial Direct Current Stimulation Enhances Retention of Visuomotor Stepping Skills in Healthy Adults

出典:Front. Hum. Neurosci., 26 June 2020 | https://doi.org/10.3389/fnhum.2020.00251

  • 目的と背景:頭部に微弱な電流を流す介入手法(transcranial direct current stimulation; tDCS)は,運動練習による上肢機能の向上を促通することができる.一方,下肢機能への効果を報告した研究は少ない.そこで,本研究の目的は,tDCSによる介入が下肢の視覚的ステッピング練習によるスキル学習に及ぼす影響は明らかにすることとした.
  • 方法:対象は健常成人20名とし,ランダムに2つのグループ(tDCS群,疑似刺激群)に分けた.tDCS(陽極刺激)群では,一次運動野における下肢領域を対象に,2mAの強度で20分間の刺激を実施した.一方,疑似刺激群は50秒間の刺激のみとした.視覚的ステッピング課題は立位にて行い,モニター上に提示されたシグナルに対して,可能な限り素早くステッピングすることとし,反応時間,ステッピング移動時間およびステッピング位置精度を計測した.視覚的ステッピング課題は,tDCS介入前,介入中,介入直後,介入30分後で計測し,各計測間で比較検討を実施した
  • 結果:tDCS群では,介入前に比べ介入30分後で反応時間の有意な短縮が認められた.一方,疑似刺激群では有意な変化が認められなかった.
  • 結論:tDCSは下肢機能に対しても有効であり,その背景には,皮質,皮質脊髄路などの興奮性変化が関与している可能性が示唆された.