7/19 勉強会

【研究報告】

担当:北谷

タイトル:視覚変位状態での姿勢制御時の分配性注意機能の解明と半側空間無視への介入手段の考案

  • 背景:半側空間無視のように視空間性の認識に変位が生じることにより、姿勢制御および姿勢制御時の周囲環境への注意配分に影響が生じることが予想されるが、半側空間無視を呈した患者の姿勢制御に関する報告は少なく、不明確な点が多い。半側空間無視に対する治療法として使用されるプリズム適応を健常者に対して反対向きに使用することで、適応後に空間性注意が変位する疑似的な半側空間無視様の症状を引き起こすことが可能である。
  • 目的:健常者を対象としてプリズム適応による半側空間無視様の視覚変位状態を作り出し、その視覚状態における姿勢制御時の分配性注意機能を検討することである。
  • 方法:対象は若年健常者とする。プリズム適応により視覚変位状態を作り出し、立位での姿勢制御中に外的視覚刺激に対する反応時間を計測する。姿勢制御課題は静止立位や不安定板上での立位など課題難易度を設定し、重心動揺指標を計測する。外的反応時間は単純反応課題と空間性注意課題としてPosner課題における反応時間を計測する。
  • 今後の展望:プリズム適応による視覚変位状態は適応を行う運動課題や固視点までの距離により持続時間が異なるため、まず、本研究課題を実施する環境下での運動課題と持続時間をプレ実験により決定する。また、姿勢制御中の脳活動解析を行うことにより、視覚変位状態における姿勢制御中の分配性注意機能に関与する脳部位を特定し、今後、脳刺激法の使用への発展が期待される。

 

【文献抄読】

担当:齊藤

タイトル:Human perceptual learning is delayed by the N-methyl-D-aspartate receptor partial agonist D-cycloserine.

出典:Dempsey-Jones et al, Journal of Psychopharmacology doi.org/10.1177%2F0269881120986349

  • 目的:D-サイクロセリンが知覚学習効果にもたらす影響を検証することであった.
  • 方法:対象は健常成人34名とし,D-サイクロセリン投与群を16名,プラセボ群を18名とした.いずれの群においても,触覚方位弁別(GOT)を用いたトレーニングを120施行実施し,トレーニング前(ベースラインテスト)とトレーニング直後(オンラインテスト),トレーニング24時間後(保持テスト)に触覚方位弁別能力の評価を実施した.D-サイクロセリンはベースラインテストの後に250mg投与し,投与してから2時間後にトレーニングを開始した.
  • 結果:D-サイクロセリン投与群ではオンラインテストと比較して,保持テストにおける触覚方位弁別閾値が低下した.一方,プラセボ投与群ではベースラインテストと比較して,オンラインテストにおける触覚方位弁別閾値が低下した.また,オンラインテストでは,プラセボ群と比較して,D-サイクロセリン投与群の触覚方位弁別閾値が高値を示した.
  • 結論:D-サイクロセリンを投与することで知覚学習に遅延が生じた.