8/16 勉強会

【研究報告】

担当:越智

タイトル:低酸素環境で行う運動による認知疲労とその神経基盤 (Ochi et al., Neuroimage, 2018)

  • 背景:運動による疲労は筋だけでなく脳でも生じるが、注意・集中力の低下といった実行機能の低下 (認知疲労) の神経基盤は不明である。
  • 目的:低酸素環境での運動が実行機能を低下させ、その際、実行機能を司る前頭前野背外側部の神経活動低下が関与するか明らかにすることにした。
  • 方法:標高3,500m相当の低酸素環境下 (13酸素濃度) で10分間の中強度運動を行い、その前後に実行機能課題であるストループ課題を行った。課題中の前頭前野の活動を機能的近赤外分光分析装置 (fNIRS) を用いて検証した。
  • 結果:低酸素環境下での運動後、ストループ課題成績が低下した。その際、前頭前野の中でも左背外側部の神経活動低下が関与していることが示唆された。
  • 結論:低酸素環境下での中強度運動は、課題特異的な脳部位である左前頭前野背外側部の活動を低下させることで認知疲労を引き起こすことが明らかとなった。

 

【文献抄読】

担当:横田

タイトル:Vagus nerve stimulation paired with rehabilitation for upper limb motor function after ischaemic stroke (VNS-REHAB): a randomised, blinded, pivotal, device trial

出典:Dawson J et al. Vagus nerve stimulation paired with rehabilitation for upper limb motor function after ischaemic stroke (VNS-REHAB): a randomised, blinded, pivotal, device trial. Lancet. 2021 Apr 24;397(10284):1545-1553. doi: 10.1016/S0140-6736(21)00475-X. PMID: 33894832.

  • 目的: 脳梗塞後の慢性期かつ中等度から重度の上肢機能障害に対して,迷走神経刺激(VNS)と運動療法を組み合わせたTargeted Plasticity Therapyを用いることで,安全かつ効果的に上肢機能が回復するかを明らかにすることを目的とした.
  • 方法: アメリカとイギリスの19のリハビリテーション施設において,108名の中等度から重度の上肢障害を有する慢性期脳梗塞患者をリクルートし,全ての被験者に対して迷走神経刺激装置の埋め込み手術を実施した. 上肢に対する6週間の集中的なリハビリテーションおよび90日間のホームエクササイズにVNSを組み合わせた53名のVNS群, VNS疑似刺激を行う55名のControl群に分け,上肢機能障害の回復をFugl-Meyer Assessment (FMA-UE)により評価した.
  • 結果: VNS群は,Control群と比較して2倍の被験者において臨床的に有意な(FMA-UE)の改善を示した.また,臨床的に有意な改善を示した被験者はVNS群の半数に及んだ.
  • 結論: VNS を用いたTargeted Plasticity Therapyは,平均3年以上経過した中等度から重度の上肢機能障害を有する慢性期脳梗塞患者に対して,集中的な上肢機能のリハビリを単独で行うよりも2-3倍の上肢機能回復を示し,革新的な治療法であることが示された.